312 Pininfarina Sigma
上の'69年型312をベースとしたピニンファリーナのコンセプトカー。
当時頻繁だったF1の死亡事故への対策を題材に一般車への安全対策をも促すプロポーザル。
集中研究、提案された項目は以下。
1、衝撃吸収構造
--ドライバー廻りの強度、剛性を高めつつ、適度に変形し衝撃エネルギーを吸収する。
2、バンパー
--ボディ外周のリング状のプロテクター。
3、跳ね石ガード(後輪後部板状パーツ)
--追い越し時の対象車への被害低減。
4、燃料タンク
--柔軟性があり耐熱性、耐破断性、自己消火能力を有する。
5、対火災装備
--エンジンスペースとコックピットの消火装置。
6、シートベルト
--6点式シート用とヘルメット用のベルト。
などで、ショーで目立ち客寄せパンダ的モデルではない、真剣な安全提案モデルである。
また構造、構成は異なるが、近年のF1安全対策規定と同じ方向性が示されている。
因みに、空力的効果は低いと思うが、ドライバー背後に設置したウイングも強固なロールオーバーゲージ効果を狙ったレイアウトと推測する。
さらに注目したいのは、全体スタイリングである。(上の同時期F1と見比べて欲しい)
当時、すでにレースカーデザインはピニンファリーナ等の美術デザイナーの手から離れていたと思うが、
後世に登場するサイドポンツーン付きF1デザインが既に表現されているし、
同じく後のタイレル(ティレル)やマーチ、ブラバム等が取り入れるスポーツカーノーズ的な概念も表現されている。
(名目上はプロテクターだが、本来訴えたかったのは空気制御だったと思う)
本車は数値的には優れていないのかも知れないが、デザイナーらしく感覚的に車体全体で空力を制御すべきと訴えていたと思えるのである。
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