以前とある自動車評論家のトークショーを見たことがある。
「優れたスポーツカーとは?」みたいなテーマで、ポルシェだのフェラーリだのアストンマーティンだの、
名車と呼ばれるさまざまなクルマに実際に乗ってみての印象を語ったあとで、評論家氏、でもね、と付け加えた。
…テストコースで乗るとすごく良いのに、公道に出ると途端に色褪せてしまうクルマがあるんですよ。
そういうクルマは、路面や周囲の環境が一定のテストコースで周回タイムを削り取るような乗り方をすると非常に面白いけど、
刻―刻と路面や周囲の状況が変化する公道では、ドライバーに過度の緊張を強いるので、あまり楽しめないんですね。
特定の条件下でのみ最良の面を発揮するクルマは、競技の道具としては優れていても乗用車としては失格です。
スポーツカーは乗用車とレーシングカーの境界の乗用車側に立つべきもので、乗用車としても優れていてはじめて
スポーツカーとしても優れていると言えるのです……。
ま、これには異論もあるだろうが、私はなるほどね、と思った。
確かに公道上では舗装の質も変化するし他のクルマや歩行者や自転車との関係もあるし
雨も降れば雪も降るし渋滞するしドライバーは常に本気というワケじゃないし。
いつも攻めてないと楽しめないのでは、乗用車としては失格だろう。
1台しか持ってなければ通勤にも使うわけだし、ある程度の懐の深さはあってしかるべきだ。
(カーモデルフィニッシャー・北澤志朗)
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