このような事件において、なぜ被害者を責めてしまう人が多いのでしょうか。
その原因のひとつが「公正世界仮説」です。
これは社会心理学用語で、「人間の行いに対しては、公正な結果が返ってくるものである」
という思い込みに基づく心理バイアスのことです。
いわば、「社会や世界に対して抱く理想」のことで、「努力すれば報われる」や、
「悪いことをした人は罰せられる」といった一般的な考え方ではあるものの、
裏を返せば、「罰せられた人は悪い人であるべき」などの固定概念に繋がります。
人は誰もが「自分の住む世界は、秩序ある世界であって欲しい」という願望を持っているので、
被害者に非があったほうが納得できるし、「何の原因もないのに被害に遭う世界」であって欲しくない。
つまり、「被害者が悪い」と思った方が安心できるので、原因を被害者に探してしまう傾向があるのです。
対処法としては、「“悪”と“対策”を分けて考える」ことです。
例えば、治安の悪い場所で深夜にスーツケースを持って歩いていた日本人が強盗殺人にあった場合、
公正世界仮説だと「そんなところに行ったのが悪い」、「深夜に出歩いたのが悪い」となります。
しかし、本当に悪いのは“犯人”です。
その上で、「治安の悪い場所に行かないようにする」、「深夜に出歩かない」といった“対策”を
講じることは可能であり、それが何よりも重要です。
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